2018/10/23
折れない心「レジリエンス」心の筋肉を鍛える7つの技術
「レジリエンス・トレーニング」とは?
レジリエンスの高い人は、ハードに働きながらも、心が疲弊することが少ないというのが私の考えです。では、仕事で成果を出すことを求められている人に必要なレジリエンスは、どうすれば身につけることができるのでしょうか?
実は、レジリエンスの力は誰にでもあるものです。逆境を乗り越える力、困難に負けない強さは、多少のレベルの違いはあれ、私たちに内面に備わっているのです。要は、それを引き出して、必要に応じて発揮すればいいのです。
さらには、レジリエンスの力は強化することもできます。このトレーニングには、皆さん非常に積極的に参加します。逆境力を身につけて仕事の能力をアップすることが目的なので、前向きな気持ちが生まれる。研修を受けた後は、皆さん驚くほどイキイキとした表情に変わります。ポジティブ心理学の手法を活用したワークによる体験学習の結果です。
「ストレスに対処する新しい方法に気がついた」
「逆境も悪くないかもしれないと思えるようになった」
「自分の感情と思い込みのクセがわかった」
「自分では気づかなかった強みを発見できた」
「今までの自分を俯瞰(ふかん)することで、過去の出来事の意味づけができた」
「科学的根拠に基づいた手法のため、すんなり入ってきた」
といった前向きなコメントが、このトレーニングの参加者からは聞かれます。そして新たな技術を習得して、仕事に挑むのです。
精神的な落ち込みを「底打ち」する
失敗やストレス体験を克服し、変化に適応するグローバルスタンダードのレジリエンスには、3つの段階があります。これを私は「レジリエンス 1‐2‐3ステップ」と呼んでいます。それぞれの段階で必要な技術を習得することで、誰にでもレジリエンスの能力は獲得することができます。
では、そのステップを理解してみましょう。
レジリエンス 1-2-3ステップ ※クリックすると拡大
1つめが「底打ち」です。私たちは失敗するとストレスを感じ、精神的に落ち込んでしまいます。それは、不安や心配などのネガティブな感情が原因となった悪循環です。まるで渦巻きに巻き込まれて海の底にずるずると落ちていくような憂鬱感やイライラが延々と続き、怒りの感情がいつまでたっても収まらない苦しさを感じます。
この「ネガティブ連鎖」を断ち切らないことには、レジリエンスの次の段階には進めま せん。ここでは、ネガティブな感情の悪循環からどうすれば脱出できるのかを学びます。スムーズな「立ち直り」を図る
2つめが「立ち直り」の段階です。精神的な落ち込みを底打ちすることができたら、次は元の心理状態へ回復することが目的となります。レジリエンスの強い人は、失敗や挑戦を恐れません。うまくいかずにつまずいても、すぐに立ち直ることができるからです。
早期に立ち直るために欠かせないのが「レジリエンス・マッスル」です。これは再起のために必要な心理的な筋肉と言ってもいいでしょう。このレジリエンス・マッスルが普段の生活で鍛えられることによって、ストレスやプレッシャーに対する緩衝力となるだけでなく、逆境を乗り越えて前進する原動力となります。
そして3つめが「教訓化」です。困難を乗り越えて元の状態に回復した後に、過去の逆境体験を静かに振り返り、次につながる意味を学ぶ内省の段階です。ここで得られた教訓は、その後出合うチャレンジに活かされます。強くたくましく、賢く成長することができるのです。
この教訓化は、焦るべきではありません。困難な状況を乗り越えた後に、気持ちに余裕ができてから振り返るほうがいいのです。まだ心の痛みが残っているときに内省して意味を見出すのは、難しいからです。
それでは、「レジリエンス1‐2‐3ステップ」で使うことができる「レジリエンスを高める7つの技術」をご紹介しましょう。これらはすべて、研究に裏打ちされた実証的な手法をもとにしています。
第1の技術が「ネガティブ感情の悪循環から脱出する」ことです。そのために効果的な方法が2種類あります。「感情のラベリング」と「気晴らし」です。
「感情のラベリング」とは、目に見えない感情を「見える化」するテクニックです。ネガティブな感情に対処するためには、その対象
である感情を見定めなくてはいけません。
ところが感情は目で見ることも、手にとって触ることもできません。
そこで「感情のラベリング」が重要となります。これは、自分の内面で生まれた感情に名前をつけることですぐに気づくための方法なのです。どんなことでもターゲットを「見える化」しないと、効果的に対処することができませんよね。それは感情でも同じです。
『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(SBクリエイティブ刊)には、私がレジリエンス・トレーニングで使用している教材をもとにした「感情カード」を特別付録としました。実際にこのカードを活用して、ストレス体験をした後に「感情のラベリング」を試してみると、自分の内面にどのような感情が流れていたのかがすぐに明らかになるはずです。自分に特有の感情パターンも理解できます。家族や友だち、同僚と「感情のラベリング」をすれば、同じ失敗体験やネガティブな出来事でも、それに反応して生まれてくる感情に大きな違いがあることに気づくはずです。
ネガティブ感情の悪循環から抜け出すための2つめの方法が、「気晴らし」をすることです。ネガティブな感情は、とてもしつこいことに特徴があります。たとえば、不安な気持ちが生まれると、いつまでたっても忘れられないことはありませんか? ときには芋づる式に別の心配事が呼び出されて、不安な気持ちが地獄の堂々巡りのように繰り返されてしまいます。
「気晴らし」とは、そのネガティブ連鎖を断ち切るために、ネガティブな気持ちを「別のことに注意を"そらす"ことにあります。ネガティブな感情や思考から、自分の意識を別の対象にシフトすることです。その結果、ネガティブな感情の繰り返しがストップし、悪循環からスーッと抜け出すことができるのです。
効果的な「気晴らし」をするコツは、まず体を使うことです。頭だけを使って別のことに注意を向けようとしても、しつこくて粘着性のあるネガティブな感情に負けてしまうからです。そして、自分に合った気晴らしの方法を選ぶことです。できれば、没頭できるぐらいのものがおすすめです。科学的根拠のある気晴らしには、主に4つのカテゴリーがあります。
(1)エクササイズやダンス、ジョギングや各種スポーツなどの「運動系」
(2)好きな音楽を鑑賞したり演奏したりする「音楽系」
(3)ヨガや瞑想、散歩など呼吸を落ち着かせる静かな活動である「呼吸系」
(4)日記や手紙など手を使って書くことで感情を表出化する「筆記系」
これらはβエンドルフィンやセロトニンなどの良性ホルモンの分泌に作用するため、生理的に体の内面からもよい効果が期待できます。
感情のラベリングを行い、嫌な気持ちの気晴らしをしても、ふつふつと湧いてくるネガティブ感情があるかもしれません。実にしつこく繰り返されるタイプです。
これは、もしかすると失敗やストレス体験がきっかけとなって生まれたネガティブ感情ではなく、過去に心の奥底につくられた「思い込み」が原因で生まれた感情かもしれません。発生原因は外側ではなく、自分の内面にあるのです。
そこで2つめの「役に立たない思い込みを手なずける」技術が登場します。
7種類の「思い込み犬」 ※クリックすると拡大
私が行うレジリエンス・トレーニングでは、ネガティブ感情の原因となる典型的な思考パターンを7種類に分け、それらに犬の名前をつけています。そうすることで、思い込みのタイプがわかりやすいこと、そして「あなたの心の中で犬がいつのまにか棲みついて、ワンワンと吠えているだけですよ」と考えると、気持ちも楽になるからです。
重要なポイントは、「思い込み犬」は皆さんの人格の一部ではないということです。あくまで、そういう性質の犬が心の中に棲んでいるだけだと考えて下さい
これらの7種類の「思い込み犬」は、後天的に刷り込まれた思考パターンともいえます。たとえば、子どもの頃に体験した喪失感や孤独感、学校で教師に他の生徒と比較されて自尊感情が弱くなった経験、または社会に出て職場で自分の力ではコントロールできない問題によって無力感に陥った体験などがきっかけとして形成されたものです。無意識のうちに学習したものであれば、意識的に手放すこともできると考えられます。場合によっては、「学習棄却(アンラーニング)」することも可能なのです。つまり、「思い込み犬」を心の中に飼い続けることも、手放すことも、私たちの選択次第なのです。思い込み犬に支配されるのではなく、それをどうするかは、私たちのコントロール下にあるのです。
●思い込み犬に対する3つの対処法
(1)追放:思い込み犬が吠えている内容が非現実的で何の証拠もない場合
(2)受容:思い込み犬が吠えている内容が理にかなっていて証拠もある場合
(3)訓練:思い込み犬が吠えている内容が100%間違っておらず今後もつきあえる場合
お問い合わせやご質問等についてはこちらよりお願いいたします。
また、毎月の鬼子母神講(毎月8日 午後7時)や七面さま講(毎月18時 午後2時~)へのご参加も
心よりお待ちしております。
日蓮宗 妙栄山 法典寺
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