牛若丸

2023/06/23

牛若丸と弁慶と言えば、童謡「牛若丸」で知られているとおり、京都の五条大橋の上で出会い、牛若丸に負けた弁慶が家来になるというお話だと思っていたのですが、室町時代に成立した軍記物語『義経記』では、法華経をまじえた別の展開が描かれています。『義経記』によれば、弁慶が999本の太刀を奪い取って、念願の1000本目の太刀を奪うために待ち構えていたのは、五条大橋ではなく牛若丸が参詣に訪れた五条天神の門前です。弁慶は牛若丸の持っていた立派な大刀を脅して巻き上げようとしますが、逆に大太刀を奪われてしまいます。
翌日、弁慶は清水寺の門前で牛若丸を待ち伏せし、再び刀を交えますが、やはり牛若丸に軽くあしらわれます。その後、清水寺の観音堂にてお経を読んでいる牛若丸らしき声を聞きつけました。近づいてみると、案の定牛若丸が法華経の一の巻、法華経の最初の巻、「序品第一・方便品第二」を読誦していました。弁慶は牛若丸の読んでいた立派な経巻を奪い取りますが、牛若丸に促されて一緒に法華経を読むことになり弁慶は比叡山でも評判の読経の達者な僧侶、牛若丸も鞍馬寺で経を読み習っていましたので、弁慶の高い声と牛若丸の低い声とが交錯して、二人で二の巻、法華経の二番目の巻、「譬喩品第三信解品第四」を半分ばかり読誦しますと、参詣人たちの雑踏のざわめきもぴたっと静まり、修行者たちも鈴の音を止めて、人々はみなこの二人の読経に聞き入ります。ちよつとの間、世間も静まりかえって、その尊さは想像を絶するほどでありました。この後、二人は清水寺の舞台で再び刀を交え、最終的に弁慶は牛若丸に組み伏せられて主従関係を結びますが、二人の心はその前の法華経読誦により既に通じ合っていたようです。

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