2026/03/06

この薬の効き目は覿面(てきめん)だ」などと使われる覩面、それに「〇〇を珍重する」などと使われる珍重、この二つの語の読み方はいずれも宋音です。つまり中国の宋代の言葉が、中国に渡った日本僧によって日本へもたらされ、そのまま日本語の中にとり入れられた語なのです。
まず「覿面」から説明しましょう。「覿」とはあうとかあいまみえるという意味の字ですから、面と面を近くに寄せ合うのが「覿面」の意味でありました。その後、禅僧の間で使われ続けるうちに、仏教語から一般語へと変わっていき、その意味も「即座に効き目のあらわれること」へと変化したようです。また「珍重」は、中国では「おやすみ」「さようなら」「ありがとう」などいろんな意味を含む暇乞いの際に言う挨拶言葉でありました。ハワイの「アロハ」やロシアの「ハラショ」に相当する、様々な場で使われる言葉だったわけです。いまでも禅宗においては、問答の終りに「珍重」と言って問答を締め括る仕来りがありますが、これなどは、語本来の使い方を伝承しているものといえましょう。
この語が、〈珍しい者として重んずる〉という意味合いで使われるようになったのは、お坊さんが辞去する時に「珍重」と言うのを聞いていると、「御自愛ください」のようにも聞こえ、それが自愛する→大切にする→めずらしいものとして大事にする、という風に変化したのでしょう。
このように中国宋代の言葉が禅宗とともに伝わり、仏教語から一般の日本語へと定着したものには、他にも「向上」などの語句があります。碧巌録や無門関、従容録など、禅僧の持ち来った本をひもといて、これらの語の本来の使い方に接するのも楽しいことかもしれません。語源はともかくとしても、私たちはその言葉の真意をくみとり、それこそ相手をいたわって珍重し、自らは向上心を起こし、天罰覩面ならぬ果報觀面を自覚に結びつけて、日々生活したいものと念ずる次第です。

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