松竹梅

2024/06/14

松・竹・梅がめでたいものの象徴となっているのは、そのいずれもが寒さにめげない生命力で、人に生きる力を与えているからだ・・・ということは、どこかでお聞きになったことがおありでしょう。今回はそこにもう一つ、菊を加えるお話をいたしたいと思います。 歳寒の三友と言えば松竹梅ですが、歳寒の二友と言えば梅と菊を指します。松竹梅の組み合わせの方がよく知られているのは、江戸時代に杵芥正次郎が長唄の曲名に「松竹梅」と付けたり、三橋勾当が琴曲の題名を「松竹梅」とした事なども、影響していると思います。
 一方、菊は皇室の紋章に使われてきましたので、民衆に親しいものとしにくかった事情がありました。菊は日本原産ではなく、花の気高さと共に不老長寿 の妙薬として珍重され、仏教とともに伝来しました。はじめは寺社の庭で栽培されていましたが、そのうち公家屋敷でも栽培されるようになり、やがて国中へと広がっていったのです。今では菊の種類も観賞用から食用まで数多く、すっかり「日本の花」となっていますね。また、菊が皇室の紋章となったのは、伝教大師最澄が皇室隆盛を祈願して、桓武天皇の為に十六葉の大輪の菊をデザインしたのが始まりです。
 ところで、中国語としての「紋」という漢字には、単なる<織物の模様>という意味しかありません。日本人はこれを「もん」と訓読して、家のシンボルマークという意味を付け加えました。家紋史は天皇家の菊のご紋に始まり、やがて公家紋ができ、鎌倉時代には武家紋が作られるようになりました。江戸時代にはさらに町人紋を生んでいきます。公家紋や武家紋には特徴がありましたが、町人絞までくると種類も多様化して、植物・動物にとどまらずあらゆる物 をデザイン化して紋とするようになったようです。
 菊のお話からどんどん飛躍してしまいましたが、菊が仏教に深い関わりがあ ることを知っていただきたいと思います。そして仏前に菊を捧げるときは、この話を思い出して戴ければ幸甚です。

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