2024/06/21
しばらくするとお盆の季節が巡ってまいりますね。毎年毎年新しい年が来、新しい命が生まれる一方で、お盆の新亡棚に祀られる者もあとを絶ちません。
ところで、新たに亡くなることを「鬼籍に入る」といいますね。人間である ことを卒業したら、次は成仏して仏に成るとばかり思っていたのに、鬼の籍に 入るとは。いったいどういうことなのでしょう。
実は、この語の中に仏教の、いやインド伝来の原始思想が込められているのです。昔、インドでは「人は死ぬと先ず暗黒の世界に行く」と考えました。この暗黒世界の死者の霊をプレータといいますが、これを漢訳したのが「鬼」という語なのです。だから鬼とは元来は単なる死者のことであり、子孫から祀 られない死者は餓えている鬼、つまり餓鬼と称されたのです。その鬼たちが死 後、それぞれの供養を受けることによって神仏になるというわけですね。
この考えが中国へ渡り日本に伝わると、いわゆる霊とは別に、鬼という全く 別のものが独立して考え出されるようになりました。そして今では、「あなた の先祖は鬼だから供養しなさい」などと言おうものなら大変なことになると いう次第です。
もっとも夜叉を鬼神、羅刹を悪鬼と漢訳していましたし、阿修羅を鬼と言う こともありましたから、それらすべてが混同してしまったとも考えられるで しよう。とにかく、死者に対していだく 一種の恐ろしさが鬼と結びつき、鬼と は恐怖すべき存在ということになって、現在の恐ろしい鬼の姿が固定化してきたといえましょう。
いずれにしても、鬼とは元来は単なる死者の意ですから、「鬼籍」とはすな わち、死者の姓名を記した過去帳のことであり、「鬼籍に入る」とは、死んで過去帳に記入されることだということも納得できますね。「鬼」も「餓鬼」も「霊」も、もう一度その語が作られた時代背景において考えてみる必要がありそうです。
それと同時に、くれぐれも供養の心を忘れないようにしたいものです。
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日蓮宗 妙栄山 法典寺
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