救われる

2024/07/05

救済
 これらの語は、現在では福祉や医療関係の語のように使われていますが、経典中では、それぞれ「クサイ・クゴ・グゼ」と読まれ、純然たる仏教語なのです。
 昔お釈迦さまの弟子に目連尊者というお方が居られました。このお方よ神通第一といわれるだけあって、普通の人が見えない世界まで広く見渡すことができたのです。
 ある日、母の乳哺の恩に報いようと思い、道眼をもって亡き母の居場所をさがしたところ、お母さまはなんと餓鬼道に落ちて、骨と皮ばかりになっておられました。目連尊者はこれをいたく悲しみ、自ら往ってご飯をさしあげましたが、それが口に入らないうちに火となり、炭と化してしまうばかりです。尊者は号泣して馳せ還り、お釈迦さまに母を救う方法を尋ねました。
 お釈迦さまは、「吾今当に汝が為に救済の法を説き、一切の難をして皆憂苦を離れ、罪障を消除せしむべし」とおっしやって母御の救済法を教えてくださいました。これがいまに伝わる盆供養の始まりですが、仏教でいう「救済」とは単にこの世に止まらず、あの世にも及ぶ広い意味があるんですね。
 「救護」もまた、仏の作用をいう言葉であり、「我今当に十方の諸仏、衆生を救護したもう神呪を説くべし」とある如く、仏さまが私たちを救い護ってくださるという大きな慈悲を表す語です。
 このように、仏さまが私たちを救済し救護してくださることにより、世の中が救われてゆくのですから、仏さまは「救世者」です。救世者とは仏の異名で、すべての仏がこれに相当しますが、中でも救世観音が一番身近におられるような気がいたします。世を救い、人々を救済し救護せんとする仏さまに見習い、私たちも他の者に対し、縁あらば出来る限りの救済・救護活動をしてゆきたいものであります。

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