くしゃみ

2024/08/02

「季節の変わり目には風邪をひきやすいですね。くしやみをする人を見ると「お大事に」と声をかけたくなります。
 くしやみをすることを、以前は「鼻ひる」と言ったそうですが、それがなぜ「くしやみ」と言われるように変化したのでしょうか。『徒然草』には鼻ひたる養い(やしな)君(きみ)のために、「くさめ、くさめ」と言ってまじないをする殊勝な尼御前の話が載っております。それによると「くさめ」とは休息(くそく)万(まん)命(みよう)の短縮形で、「体を大事にして長生きするように」という意味なんですね。
 またその昔、お釈迦様が説法中にくしゃみをなさったら、弟子達がいっせいに「クサンメ」と申し上げたという話が四分律に載っています。「時に世尊嚏(くしやみ)す、諸比丘(しよびく)呪願(じゆがん)して長寿と言う」というくだりがあるのです。嚏(くしやみ)そのものを梵語で「クシュト」と言うことから<クシュト+クサンメ=くしやみ>となったなんて考えるのも、おもしろいではありませんか。
 「くしやみ」は不可抗力的に出てくるものであり、自分の意志ではどうにもならないものですから、昔の人は不吉なものとみなし、呪文を唱えて魔性を追い出そうとしたのでしょう。あるいは、自分の魂がくしやみとともにさ迷い出て、魔性のなぶりものになると考えられた時代さえあったようです。
 これに対して民俗学者の柳田国男は、くしゃみをした時「クソクラエ」と同じ意味で「クソハメ」と言ったのが訛(なま)って「くしやみ」となったのだと指摘しています。いずれにしろ、くしゃみはあまりよいものとは考えられていなかったようです。
 「クソハメ」と唱えて魔性に対抗するか、「休息万命」と言って身の無事を祈るか・・・。「一つ誉められ、二つは悪口、三つは風邪」などとも申します。
 どちらにしても、くしゃみがが出た時には、心身にくれぐれも気をつけることにいたしましょう。皆さまのご健勝とご多幸を祈念してやみません。

お問い合わせ

お問い合わせやご質問等についてはこちらよりお願いいたします。
また、毎月の鬼子母神講(毎月8日 午後7時)や七面さま講(毎月18時 午後2時~)へのご参加も
心よりお待ちしております。

日蓮宗 妙栄山 法典寺
〒418-0023 静岡県富士宮市山本371-1
Tel.0544-66-8800
Fax.0544-66-8550


pagetop