向上

2024/10/18

小学校二年生の娘が、西瓜を食べながら突然こんなことを言いました。「人間に生まれて良かったー。だって西瓜を食べられるんだもん。でも人間って勉強しなければならないんだよね。勉強しないですめば、もっといいんだけどな」。私は吹き出しそうになりながら言いました。「じゃあ金魚にでも生まれるか。金魚鉢の中でただ遊んでいればいいよ。野生の動物だといつも危険にさらされてるけど、食いっぱぐれが無くて遊び放題なのは金魚が一番だよ」。でも、娘はやっぱり人間の方が良いようでした。
 それにしても、勉強しなくてすむ人間というのはいるのでしょうか。そうですね。人間は常に勉強して進歩・向上しているからこそ、人間でいられるのです。人間に向上心がなかったら、歴史も文化もなく、今日なお野生の動物と同じ生活をしていたでありましょう。 ところで、この「向上」という語の本来の意味をご存知でしょうか。「向上」とは、中国中世の俗語で「さらにその先」というほどの意味だったようです。これに肉づけをして、「下から上に向かって進歩すること」すなわち、「心落ち着け仏法を学んで、迷える世界から悟りの世界へ入る」という意に転じて用いたのです。「向上の一路」といえば、至極の大道、言いかえれば悟りを指します。せっかく人間に生まれてきたのですから、日日の生命をなおざりにせず、向上一路のために使いたいものです。また、『伝灯録』という書物に「向上一路千聖不伝」とあるとおり、「向上」という真実絶対の悟境は伝えるに難しく、自らの実参実究によってのみ体得し得るものとされています。各自が常に向上心をもって歩み、人間が費すにふさわしい一日として 日日を積み重ねてゆきたいものであります。

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