2024/11/22
鎌倉時代のこと、時の執権・北条時頼に招かれて、宋の国より来朝された方で、兀菴普寧という禅僧がおられました。このお方は臨済宗楊岐派に属し、建長寺に住して気概に富んだ禅風を挙揚なさいました。
時頼はこのお方に参禅聞法して大悟し、印可を受けたといわれますが、一般市民からみると、兀菴の話はずいぶん理屈っぽくてわかりにくかったようです。そこで当時の鎌倉人は、わけのわからないような話し方を評して、「まるで兀菴さんのようだ」とか、「ごったんごったんしている」と揶揄したそうです。これが、「ごたごた」や「ごたつく」という言葉の起源なのです。「ごちゃごちゃ」という言葉もこの派生です。
この言葉を使う側からすれば、「あなたの話はわかりにくい」とは言いづら 八ので、「ごったんさんのようだ」と言ったのでしょうが、皮肉を込めて譬えられた兀菴禅師は、きっとあの世で苦笑なさっていることでしょう。
ところで、「ごたく」という言葉も、これによく似た使い方をされますが、こ れは「御託宣」の略で、<神仏が人に乗り移ったり夢枕に立ったりして、その 意を告げること>を申します。これが転じて、自分勝手なことをもつたいぶつ て言うことを、皮肉を込めて「ごたくを並べる」と揶揄したわけです。
人を評する時、何かわかりやすいものに譬えるのはよいのですが、そのため に、本来は良いものが悪いものに転じてしまうのは困りものです。 今では、「ごたごた」も「ごたく」も、悪い意味の時にだけ出番のある言葉 になってしまいました。そういえば「お説教」という言葉もその部類に入る でしょうか。
しかし、その語源を知った私たちは、「ごたごた」や「ごたく」という言葉を聞いたら、少なくともその中から何かを得ようと思い、お説教を聞いたら、それをお悟りの因縁にしようと考えるようにして、できるだけ良い方に受けとってゆきたいものです。
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