2025/08/01
制止・停止
今では「相手の言動を抑えとどめる意」に用いられている「制止」という語句ですが、本当に制止しなければならないのは何でしょうか。仏教辞典には、「欲望を制し止めること、戒の異名なり」と出ておりました。欲望を制止することは、自分本来の姿にたちかえることであり、そのためには戒を保つことが一番です。制止の状態とは右にも左にも傾かず、前にもくぐまらず、後ろにもそり返らず、中道実相と一体になることであり、正座の姿に一致します。
「制止」・「戒」・「中道」・「坐禅」が同じことだと言っても解りづらいでしょうが、同じことを違う角度からとらえた言い方だと考えたらどうでしょう。本来的な意味での制止を行えば、実感的に解るのかもしれません。
次に「停止」です。これは一般に<呼吸が停止する>とか、<車を停止線上に止める>とか使われますが、これも本当に停止(仏教読みでは「ちょうじ」)しなければならないのは、私たちの邪心に他なりません。煩悩にまみれた心をしばし停止してみましょう。仏教では「五停心観」と言って、邪心を停止する五種の観法があります。
①外界が不浄だと観じて、貪りの心を停止する不浄観
②相手の立場に立って瞋りの心を停止する慈悲観
③物事の道理をよくみて愚痴の心を停止する因縁観
④広い世界をよくみて我見を停止する界分別観
⑤呼吸を整えて散乱の心を停止する数息観です。このようにして、貪・瞋・痴・我見・散乱という五つの心の過ちを停止して得られる仏道修行の成果を「五停心位」と言います。 私たち凡人は、解っていてもなかなか本当の制止や停止ができません。自動車を制止したり停止したりすることはできても、自分の心のブレーキを操作をすることは難しいですね。心の中のアクセルとブレーキをしっかり見つめることが大切ですね。
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